小倉貴久子の《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》

シリーズコンサート 公演記録(第9チクルス:第27回、第28回、第29回)

《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》には毎回、モーツァルトと関わりのある作曲家等をひとりずつゲストとして迎えます。 モーツァルトとゲスト作曲家のクラヴィーアのソロ作品、またピリオド楽器奏者と共にお届けする室内楽、連弾、歌曲などなど、お話を交えながらのコンサートです。 18世紀にタイムスリップしたかのようなひととき、《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》にみなさまをご案内いたします!

《第27回》

2017年5月10日(水)午後6時45分開演(開場6:15)

近江楽堂 

《第27回》公演は終了しました! 

〔ゲスト作曲家〕L.v.ベートーヴェン Ludwig van Beethoven [1770-1827]

小倉 貴久子(クラヴィーア)・三宮正満(オーボエ)・満江菜穂子(クラリネット)

塚田 聡(ホルン)・岡本正之(ファゴット)

L.v.ベートーヴェン:

クラヴィーアとオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットのための五重奏曲 変ホ長調 作品16、クラヴィーア・ソナタ ニ短調 作品31-2《テンペスト》

 

モーツァルト:

小品 K.15p/オーボエ・コンチェルト ハ長調 K.314より第3楽章/クラリネット・コンチェルト イ長調 K.626より第2楽章/ホルン・コンチェルト ニ長調 K.412より第2楽章/ファゴット・コンチェルト 変ロ長調 K.191より第3楽章 / クラヴィーアとオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットのための五重奏曲 変ホ長調 K.452

(写真はゲネプロの様子)

〔コンサートの聴きどころ〕第27回:L.v.ベートーヴェン

 28歳のモーツァルトが「私が今までの生涯に書いた中で最もすぐれた作品」と自賛したオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットとクラヴィーアのための五重奏曲は、室内楽の誉れ高い傑作として輝きを放っています。興味をそそられるのは、同じ年頃のベートーヴェンが、モーツァルトの作品を範にして同じ編成、同じ調性での作品を残していることです。シンフォニー第1番を世に出す前夜のベートーヴェンがモーツァルトへの敬意を込めながら書いた、管楽器の扱いの卓抜さに秀でた五重奏曲。クラヴィーアソロ曲はベートーヴェンが「新しい道」と名付けたソナタ集から《テンペスト》を。モーツァルトは、管楽器の特徴を生かした協奏曲を残しています。各楽器の協奏曲からひとつの楽章を、楽器のお話と共にお楽しみいただきます。

 モーツァルトからベートーヴェンへと受け継がれた天才性が、ピリオド楽器を操る管の名手たちと共につまびらかになることでしょう。

〔第27回公演報告〕

第27回のゲスト作曲家はベートーヴェンということもあり早々にチケットが完売、大盛況の会になりました。モーツァルトとベートーヴェンの〈クラヴィーアと管楽器のための五重奏曲〉をメインに、ベートーヴェンのソナタ《テンペスト》。そしてモーツァルトが書いた各管楽器のためのコンチェルトを1楽章ずつ楽器の紹介とともに披露するコーナーも!それぞれの木管楽器の名手たちによる楽器の魅力が最大限に発揮された演奏で、会場は大盛り上がりとなりました!この日のゲストはクラシカル・オーボエ三宮正満さん、クラシカル・クラリネット満江菜穂子さん、ナチュラル・ホルン塚田聡さん、クラシカル・ファゴット岡本正之さん。

《当日のアンケート・ブログなどより》

・今回の演奏会は私が聴いた最近のベストでした。曲目、演奏の方々とも期待した以上の至福のひと時を過ごしました。いつもながら曲目構成も素晴らしくて、ほかに例のない充実感がございました。塚田様のホルンはじめ名手が奏でる古楽器の調べは会場の雰囲気と相まって、さながら貴族のサロンコンサートにタイムスリップしたかのように感じました。

・やや長いコンサートが終了し、まず感じたのはプログラム構成が絶妙だったということです。このプログラムのどの部分も削ることはできないことがよくわかりました。続いての協奏曲のさわり集は後に続く五重奏に向けた各奏者と楽器の紹介という位置づけなのでしょうがそれぞれの全曲が聴きたくなるほどの素晴らしい演奏でした。なかでも塚田さんのホルンはいつもオケでone of themでしか聴いていなかったのでソロは初でしたがピリオド楽器でこそモーツァルトとロイトゲープのユーモラスな関係がわかるということが生で実感できました。また満江さんのバセットクラリネットの音も普段聴くモダン楽器と違う味わいがあり印象的でした。五重奏について、若きベートーヴェンの作品ではどうしてもモーツァルトに軍配が上がると感じたのはのはやむをえないでしょうか。あるいは今回の特にベートーヴェンの演奏は合奏ということもあってか各奏者の個性が相殺されてやや最大公約的だったのかもしれません。また合奏時の管の音ですが、うまく言えませんがモダン楽器で聴ける音の溶け合いのようなものが感じられませんでした。これがピリオド楽器の個性ということなのでしょう。ある音楽評論家がピリオドオケの音を良い意味で「雑味」と書いていましたがそういうことかもしれません。変な例えかもしれませんが料理でいえば、冷やし中華でしょうか。個々の食材が独立して混ぜても溶け合わない?当時この編成で他の作曲家の作品が少ないという理由のひとつかもしれないと勝手に連想しました。「テンペスト」は個人的には今回の演奏会の白眉でした。モダン楽器では数えきれないほど聴いていますが実演でFpの同曲を聴くのは初めてでした。前回のビゼーの時と同じく先入観でFpは緩徐楽章での表現力に限界があると思い込んでいましたが今回も覆されました。第2楽章第2主題が弾かれた際、何か全身に浮遊感みたいなものを感じました。その理由はわかりませんが小倉さんのマジックなのでしょう。この部分に限らず全曲を通して今まで聴けなかったこの曲の真髄に初めて触れと思いました。

・今日はモーツァルトの協奏曲をクラシカル楽器で存分に聴いたのに加えて、管楽器のアンサンブルの作品も聴けたような、1回で2度美味しいような音楽会でした。あっ、フォルテピアノのソロもあったから3度かも!フルコースを並みの満足感いっぱいで、帰ることができました。次回を楽しみにしています。

・近江楽堂・モーツァルトのクラヴィーアのある部屋終了。いきなり8歳の曲で度肝を抜かされ、今回のお客様、ベートーヴェンのテンペストは小倉貴久子さんの演奏で滋養が行き渡り、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンとの5重奏で2人分の音楽の違いを満喫し、拍手喝采。充実した時間でしたね!

・三宮正満Ob、満江菜穂子Cl、塚田聡Hr、岡本正之Fgを招きベートーヴェン五重奏とソロでテンペスト。モーツァルト各協奏曲抜粋、五重奏とソロでK15p。名手達とFpの音色に魅了されつつ、テンペストでの説得力ある解釈は圧倒的だった。+K297bの3楽章。

・しかし今日の小倉貴久子さんのベートーヴェン・テンペストはSFみたいでしたね。空間が歪んで白い世界に飛ばされるかと思いました。 でも率直な感想な筈なのに絶対意味不明だ…今日近江楽堂に行かれた方は多少は伝わって頂ければ、なのですが。モーツァルト8歳の曲も凄かったよ!!

・まるでピリオド楽器のガラコンサート!盛り沢山ゆえ6時45分開演。ソロ、コンチェルト、五重奏、夢のような大盤振る舞いに、嬉し過ぎて酸欠状態でした。 

・贅沢な夜でした。三宮正満さんのクラシカルオーボエ、満江菜穂子さんのクラシカルクラリネット、塚田聡さんのナチュラルホルン、岡本正之さんのクラシカルファゴット。最前列で、管楽器奏者の皆様のブレスが聴こえ、貴久子さんの指が見える位置で美しい音楽のシャワーをたっぷり浴びました。幸せ~。

 (ご来場のお客さまのブログやメッセージから転載しました)

第27回公演の使用楽器:Klavier made by Chris Maene after Anton Walter [1795]


《第28回》

2017年7月7日(金)午後7時開演(開場6:30)

近江楽堂

《第28回》公演は終了しました! 

〔ゲスト〕B.クリストーフォリ Bartolomeo Cristofori [1655-1732]

小倉 貴久子(クラヴィーア)

L.ジュスティーニ:ソナタ ト短調 Op.1-1/D.スカルラッティ:ト短調 K.8、ソナタ ニ短調 K.9/B.ガルッピ:ソナタ ハ長調/B.マルチェッロ:ソナタ 第4番 ト短調/G.F.ヘンデル:フーガ ハ短調、組曲第1集より第5番 ホ長調 

 

W.A.モーツァルト:小品 ハ長調 K.9a、変ロ長調 K.15q/8つの変奏曲 ト長調 K.24/ヴェローナのアレグロ ト長調 K.72a/メヌエット ニ長調 K.94/組曲 ハ長調 K.399/ジーグ ト長調 K.574

(写真はゲネプロの様子)

〔コンサートの聴きどころ〕第28回:B.クリストーフォリ

 ピアノは1700年頃フィレンツェで誕生しました。発明者はメディチ家の楽器製作家バルトロメオ・クリストーフォリ。ハンマーで弦を打つ新楽器はGlavicembalo col piano e forte(弱音と強音をもつチェンバロ)と名付けられ、長い名前が短縮されて「フォルテピアノ」「ピアノ」という呼称が生まれました。タッチによって強弱の変化や多彩な表現が可能となったクリストーフォリの発明は、現代のピアノへと継承されている基本的構造が多数あります。18世紀後半、チェンバロは衰退し人々はフォルテピアノに熱狂。幼少期のモーツァルトはチェンバロを演奏していましたが、フォルテピアノが市民権を得るのと時を同じくしてフォルテピアノのために作曲するようになります。 

 ピアノのめの史上初の曲集ジュスティーニや、クリストーフォリのピアノと関わりのあった作曲家の作品。そしてモーツァルトのイタリア旅行、ヘンデルから受けたバロック体験などから生まれた作品を、クリストーフォリで辿ります。

〔第28回公演報告〕

今回の小倉貴久子の《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》は、製作家のクリストーフォリを迎え催されました。久保田彰製のクリストーフォリ・ピアノを持ち込んでの演奏会。チェンバロともウィーンの初期フォルテピアノとも違う、個性的な音色のクリストーフォリが奏でる、18 世紀のイタリアの巨匠たちの作品や、モーツァルトの初期作品。そしてモーツァルトがヘンデルやJ.S.バッハの組曲に倣って書いた組曲 ハ長調 K.399や、ジーグ ト長調 K.574という珍しい作品。モーツァルトとクリストーフォリ・ピアノとの思いがけない出会いから、また新しいモーツァルトの魅力が露わになりました。今回も会場は満席、ご来場いただきましたみなさま、ありがとうございました!

第28回公演の使用楽器:Klavier made by Akira Kubota after B.Cristofori [1726]


《第29回》

2017年9月28日(木)午後7時開演(開場6:30)

近江楽堂

《第29回》公演は終了しました!

〔ゲスト作曲家〕J.B.アウエルンハンマー Josepha Barbara von Auernhammer [1758-1820]

小倉 貴久子(クラヴィーア)・山名敏之(クラヴィーア)

J.B.アウエルンハンマー:モーツァルトのオペラ〈魔笛〉のアリア「おいらは鳥刺し」の主題と6つの変奏曲 ト長調

 

W.A.モーツァルト:小品 ト短調 K.15r、四手のためのそなた 変ロ長調 K.358、「ああ、お母様聞いてちょうだい」による12の変奏曲 ハ長調 K.265(演奏者による二台クラヴィーア編曲版)、二台のクラヴィーアのためのフーガ ハ短調 K.426、二台のクラヴィーアのためのラルゲットとアレグロ 変ホ長調(R.レヴィンによる補筆完成版)、ヴァイオリンとクラヴィーアのためのソナタ「アウエルンハンマー・ソナタ」ヘ長調 K.376(S.イェーツによる二台クラヴィーア編曲版)、二台のクラヴィーアのためのソナタ ニ長調 K.448 

〔コンサートの聴きどころ〕第29回:J.B.アウエルンハンマー

 「この若いお嬢さんはひどく醜い人です」。モーツァルトは父親にアウエルンハンマー嬢との浮ついた話などないと、彼女に対し気の毒なほどひどい言葉を手紙に書き連ねています。しかしこれにはモーツァルト特有のパラドックスが含まれているようです。「アウエルンハンマー嬢と結婚?」という噂も誠しやかに流れていたとか。いずれにしても、アウエルンハンマー嬢への特別な親愛の感情は、彼女と演奏するために作曲された諸作品を聴けば明らかです。また、姉・ナンネルとクラヴィーアでのデュオに慣れていたモーツァルトにとって、彼女の存在はかけがえのないものであったに違いありません。

 彼女にまつわる二台のクラヴィーアのための作品と連弾曲。アウエルンハンマー・ソナタ集として知られるヴァイオリン・ソナタを、当時のエピソードに基づき二台のクラヴィーアに編曲したもの。アウエルンハンマー作曲のモーツァルトの主題による変奏曲などをお届けします。

〔第29回公演報告〕

モーツァルトが非常に高く評価していたアウエルンハンマーのクラヴィーア演奏。彼女との共演のために、モーツァルトは二台クラヴィーアのための大規模な傑作作品を残しています。今回は、いつものヴァルターと、太田垣至製のデュルケンのクラヴィーアを運び込み、小倉貴久子と旧知の間柄である山名敏之さんとともにお送りしました。️アウエルンハンマー作曲の変奏曲や、どんな風になるか、と演奏するまで分からなかった「お母様聞いてちょうだい」変奏曲の2台フォルテピアノでの即興的な演奏も、お客様から大喝采をいただきました!

公演の模様


第29回公演の使用楽器:Klavier made by Chris Maene after Anton Walter [1795]

           Klavier made by Itaru Ohtagaki after J.L.Dulcken [1795]