シューベルトに親しむための必読書
unbedingt lesen muessen
彼ら、超偉大な詩人あってのシューベルト。
これら「世界文学」は、地球上の人間全てに今なお訴えかける宝でもあります。
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ゲーテ:若きヴェルテルの悩み
J.W.v.Goethe:
Die Leiden des Jungen Werthers
基本!
すべての若者がこのように愛することを願い
すべての少女がこのように愛されることを願う。
ああ、だが、われらの衝動のうちでも類なく神聖なるもの
何故そこから、かくも恐ろしき苦しみが生まれるのか?
ゲーテ:ファウスト
J.W.v.Goethe:
Faust
1806年に完成した第1部は特に重要。
1815年、17歳のシューベルトが書いた最初のゲーテ歌曲は、記念碑的歌曲である『糸を紡ぐグレートヒェン』。
この他にシューベルトは、ファウストを元に
・『トゥーレの王様』 作品5-5 D.367
・『グレートヒェンの祈り』D.564
・「ファウスト」からの一場面 D.126
に付曲している。
ゲーテ:
ヴィルヘルム・マイスターの修行時代
J.W.v.Goethe:
Wilhelm Meisters Lehrjahre
Wilhelm、座右の書。
・『あの国をご存知ですか』D.321
・『ただあこがれを知るひとだけが』D.877-4
・『語れとはいわないで』D.877-2
・『この姿のままで』D.877-3
ミニョンが竪琴弾きと歌うはかない詩に、Schubertは何回も付曲を試みている。
ウォルター・スコット:湖上の美人
Walter Scott:
The Lady of the Lake
1810年に英語で出版された物語詩「湖上の美人」は、アダム・シュトルクにより独訳され、シューベルトの愛読書となった。この物語の中の独立した歌の部分を使って、シューベルトは5曲のリートと、2曲の合唱曲を作曲。作品52として1825年に発表している。この中の第6曲は、ヒロインのエレンが、吟遊詩人爺アラン=ベインの伴奏で歌う「アヴェ・マリア」。
・『エレンの歌 第一』D.837
・『エレンの歌 第二』D.838
・『エレンの歌 第三(アヴェ・マリア)』D.839
他
ノヴァーリス:
青い花
Novalis:
Heinrich von Ofterdingen
無限なるものへの憧憬を「青い花」に託して描いたドイツロマン派の詩人ノヴァーリス(1772−1801)、最晩年の小説。
超越された世界が垣間見える、ロマンティックで詩的な作品。
シューベルトはノヴァーリスの下記の詩に付曲している。
・マリア
・賛歌1〜4
・夜の賛歌
シラー:
ヴィルヘルム・テル
J.Ch.Fr.Schiller:
Wilhelm Tell
自由と正義の理想を生涯求め続けた、シラー最晩年の1804年に完成された戯曲。
ゲーテ:
ヘルマンとドロテーア
J.W.v.Goethe:
Hermann und Dorothea
シューベルトの生まれた1797年に完成された恋愛叙事詩。
ゲーテ:
親和力
J.W.v.Goethe:
Die Wahlverwandtschaften
人倫を越え、物質が化学反応を示して互いに牽きあうかのように働く「親和力」。夫婦や家族の制度を破り出て人を愛し合うのも自然の力である。人間は自覚的な強い意志をもってそれに対抗できるのだろうか。 1809年、60歳の青年ゲーテの小説。
必読書まではいかない、いわば参考書
ゲーテ:
ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代
J.W.v.Goethe:
Wilhelm Meisters Wanderjahre
修業時代の続編だが、前作とはだいぶ様相が異なる。ゲーテ晩年の箴言に触れられる。
第一部は1821年に完成。全稿が出版されたのはSchubert死後の1829年になる。
シェイクスピア:
ハムレット
W.Shakespeare:
Hamlet
「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」で、主人公ヴィヘルムが没頭している戯曲。
「修業時代」を読む前にあらかじめハムレットに親しんでいる方が話が分かる。
シラー:
群盗
J.Ch.Fr.Schiller:
Rauber
"Strum und Drang" ここに極まれり!
レッシング:
ミンナ・フォン・バルンヘルム
G.E.Lessing:
Minna von Barnhelm
啓蒙主義者レッシングが7年戦争後の1763年に書いた戯曲。
続くドイツ文学に大きな影響を与えた。
ヴォルテール:
カンディード
Voltaire:
Candide
フランス革命を思想的に後押ししたヴォルテール、1759年の作品。
どんなに辛いことがあっても全ては善だとする哲学者パングロスの言葉の裏付けを得るために冒険をするカンディード。その言葉を裏切るようなことばかりの現実ですが、平和と内心の自由で作られた文明、自分たちの畑を自分で耕せる場所を理想としよう、というヴォルテールの心の声が聞こえてきます。
アイヒェンドルフ:
愉しき放浪児
J.v.Eichendorff:
Aus dem Leben eines Taugenichts
自由に憧れ広い世界に飛び出した若者と美しい令嬢との恋の顛末。余剰的で朗らかな雰囲気にみちたドイツ・ロマン派文学の白眉。
世界も恋にとっては余りに狭く、永遠もまた余りに短い。いや、恋はそもそも、あらゆる空想家がアルカディアへゆくために、この冷たい世界でまとう詩人のマントだ。
ロマン派の詩人アイヒェンドルフ39歳(1826年)の作。
各所に詩が散りばめられ、冒頭から「水車屋の娘」の雰囲気そのものの本作にシューベルトが痺れなかったわけはないと思うのだが、なぜか生前ふたりの出会いはなかった。しかしその後、シューマン、メンデルスゾーン、リヒャルト・シュトラウスらにより付曲され、その詩に永遠の輝きが与えられた。
アルフォンス・ドデ:
風車小屋だより〜アルルの女
Alphonse Daudet:
Lettres de mon moulin 〜 L'Arlésienne
死に至る病「恋」の物語を題材とする名作「カルメン」と「アルルの女」を作曲したビゼーは、19世紀フランスが生んだシューベルトといってもよい要素をもつ作曲家。
すでに役目を終え朽ち果てた風車小屋を、小説を書くためのインスピレーションの源とわざわざ買い求めたアルフォンス・ドデ。彼の代表作「風車小屋だより」。そこに収録された一小話をビゼーに捧げるため戯曲に編み直した「アルルの女」。
シューベルト的要素がにじみ出る、この田園哀歌の紹介です。