メンデルスゾーン ヴァイオリン・ソナタ全集

ヴァイオリン:桐山建志

フォルテピアノ:小倉貴久子

 

収録曲:

フェーリクス・メンデルスゾーン・バルトルディ(1809〜1847)

 ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調(1820年)

 ヴァイオリン・ソナタ ヘ短調 作品4(1823年作曲)

 ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調(1838年初稿)

 ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調(1839年改訂稿、第1楽章断片)

使用ピアノ:Chris Maene, in Belgie. 1995 (model Anton Walter, in Wien. 1795)

      Johann Baptist Streicher, in Wien. 1845 

録音:2003年8月26日〜28日 牧丘町民文化ホール 発売:2004年5月

楽曲解説:星野宏美(日本語、英語)  

ALM Records ALCD-1056 3,045円(税込価格)

CD:メンデルスゾーン ヴァイオリン・ソナタ全集

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このディスクは朝日新聞『クラシック試聴室』のコラムで紹介され、「レコード芸術誌」で「準推薦」を受けました。

メンデルスゾーン オリジナル資料に基づくヴァイオリン・ソナタ全集

後期ヘ長調ソナタの「初稿」および「改訂稿」世界初録音!

 

〜こうして桐山建志と小倉貴久子は当録音にあたりオリジナル資料を入念に吟味し、メンデルスゾーンの意図を質しながら作品を緻密に再構成していった。その一方で彼らは、時には自由に即興を加えつつ、音色やアーティキュレーションの妙により作品に瑞々しい生命を吹き込んでいる。楽器の特性と響きを生かした豊かな表情は、ふたりのデュオの真骨頂であろう。しなやかな感性とあくなき探求心が結実し、メンデルスゾーンのヴァイオリン・ソナタの新しい世界を切り開いた、エキサイティングな演奏である。(ブックレット解説より)

レコード芸術 2004年7月号

CD評 メンデルスゾーン/ヴァイオリン・ソナタ全集

[準]このところ意欲的な活動を続けている桐山建志が小倉貴久子と組んでメンデルスゾーンのヴァイオリン・ソナタ全曲を録音した。ここでも彼らは単に現行の出版譜を演奏するのではなく、メンデルスゾーンの自筆譜までさかのぼって検証し、出版譜の校訂者による改編に加えて、作曲家自身による明らかな誤りまで訂正して演奏している。特に作曲家が途中で放棄したヘ長調ソナタの改訂版(1839)は世界でも初めての録音であろう。

 ヘ長調ソナタ(1820)では桐山の美しい音が調性と結びついて、のびやかな情感を生み出している。また第2楽章の変奏曲では音色と表情を細かく変化させて繊細な感情を表現している。彼も小倉もリズムのアクセントが適切なので演奏全体が生き生きしており、特に第3楽章では充実した気力が演奏に説得力をもたらしている。

 ヘ短調ソナタも好演。特にロマン的な感情が豊かに起伏する第3楽章で桐山は見事な対応を示している。

 ヘ長調ソナタ(1838年のオリジナル版)では、桐山も小倉も気力の充実した演奏を聴かせるが、感情の起伏は自然で音楽の性格に合致している。同じソナタの1839年改定版も好演。

 なお小倉は1795年のヴァルター・モデルのコピーと、1845年のシュトライヒャーのフォルテピアノを使い分けている。作曲年代を考慮してのことと思われるが、両者の音色と響きの相違がわかって興味深い。(高橋 昭氏)

[準]ヴァイオリンの桐山建志が今回はフォルテピアノの小倉貴久子と組んでメンデルスゾーンのヴァイオリン・ソナタ全3曲を収録した。しかも、作品番号を持たない後期の「ヘ長調ソナタ」の1838年初稿の世界初録音と、このソナタの1839年改訂稿第1楽章のフラグメントの世界初演。メンデルスゾーン研究者の星野宏美氏の解説によれば、桐山と小倉はベルリン国立図書館やオックスフォードのボドリー図書館に所蔵されているメンデルスゾーンの自筆譜や筆写パート譜まで丹念に調査して、また後期のヘ長調ソナタでは一般に使われている出版譜(メニューイン校訂)にはメニューインの編曲とも言えるような主観的補筆があることまで確認し、可能な限りメンデルスゾーンの1838年段階での自筆譜完成時の初稿をも再現しているという。その際、初稿に見られる明らかに不自然な箇所をわずかに手を加えて演奏しているという。このような意味からしても今回の桐山=小倉の録音は意義深い。しかし、前述したようなこととは無関係にこの演奏は大変にすばらしい。1820年というから、作曲者が11歳になるかならないかのころのヘ長調ソナタの音楽作品としての、完成度の高さとは言わないまでも、少しも稚拙なところのない愛らしく、生き生きとしたヴァイオリン・ソナタの表情も十分に楽しめる。唯一作品番号の付いた1823年作曲の作品4ヘ短調ソナタの、深刻な表情を湛えて無伴奏のアダージョで始まる第1楽章の静謐さのなかにも熱いものを感じさせる表現。そして、しばしばヴィイオリンとピアノの独奏による楽句が織り込まれた独特な構成など、この作品の魅力を十分に表現している。また、ピアノの独奏ではじまる第2楽章の開始2音を聴くだけで第1楽章主題との関連を感じさせる曲の構成をこの演奏はしっかりと認識している。こうした静謐な先行楽章2つのあとに終楽章アレグロ・アジタートが情熱的に高揚する。

 この楽章でピアノ声部の高音域にあるトリルがフォルテピアノならではの不思議な音色と響きを醸しているのも、私には魅力的だし興味深い。そして、大戦後になるまで出版されずに手稿譜のまま残されていた後期のヘ長調ソナタ(メンデルスゾーンが3曲すべて「へ音」を主音とする調で作曲しているのも興味深いが)の初期稿が溌剌として精彩に富んだ表情で演奏されている。そして、フラグメントとは言え、その第1楽章の1839年改訂稿がかなり違った表情をもっているのを確認できることが嬉しいし興味深い。ただ、この改訂は音楽的な要求からメンデルスゾーン自身が行ったものではあろうが、初期稿の何の疑問や一点の曇りもなく前進する自然な高揚感も捨てがたい魅力をもっているのを確認できる。桐山と小倉のアンサンブルも大変に見事だ。(平野 昭氏)

録音評 90~93点 〈三井 啓氏〉