日本ベートーヴェンクライス特別例会(第2回よこはま例会)

ベートーヴェンとホルン

第1部:演奏付きレクチャー(昼・夜二部構成)

2023年6月13日(火)14時開演(13時30分開場)

横浜みなとみらい レセプションルーム

みなとみらい駅(東急東横線直通/みなとみらい線)下車徒歩3分

〈第1部:演奏付きレクチャー〉は好評をいただき完売となりました。予約受付を終了しました。

〈第2部:コンサート〉は広い会場になりますので、引き続き予約を受け付けております。当日券もあります!

企画・構成:塚田 聡

演奏:ナチュラルホルンアンサンブル東京(伴野涼介/大野雄太/藤田麻理絵/下田太郎/大森啓史/塚田 聡)

お話:土田 英三郎(BKJ副代表・東京藝術大学名誉教授)

ベートーヴェン特有の奏法開拓

オーケストラ・フレーズで聴く

・ベートーヴェン時代のホルン、ナチュラルホルンとは?

・ホルンの響きがシンフォニーの調性を決めた?

見どころ聴きどころ

 ベートーヴェンの時代のホルンは弁(バルブ)のついていない、ただ管を巻いただけの楽器でした。それはどのような響きだったのでしょうか。21歳までを過ごした故郷ボンでベートーヴェンは同僚の宮廷楽士ジムロックにホルンを習っていたことがあったかもしれません。また、ウィーン時代には当時のホルン演奏の名手プントとの共演によってホルンという楽器を知り尽くし、この楽器の性能を駆使して新しい使用法を開拓してゆきました。

 今回の昼夜二部構成の横浜特別例会では、ナチュラルホルンの知られざる魅力とベートーヴェンの革新的なホルンの表現法をオーケストラ作品と室内楽作品でお楽しみいただきたいと思います。

 第1部のレクチャーでは、いわゆるナチュラルホルンという楽器の特性を紹介しながら、ベートーヴェンが四半世紀にわたって作曲した9曲の交響曲の中でホルンがどのように使われ、いかに重要な役割を果たしているかを紹介します。レクチャーの中では、オーケストラのホルンパートを次々と実演。調性による響きの違い。あらわになるハーモニー感。ベートーヴェンの思い描いていたオーケストラサウンドがよみがえります。

第1部:2,000円(一般)、1,000円(BKJ会員・横浜みなとみらいホールウェブフレンズ・学生)*全席自由

♪第1部、2部の両方をお聴きくださる方には、プログラムノートを無料で進呈いたします♪

〈第1部:演奏付きレクチャー〉は好評をいただき完売となりました。予約受付を終了しました。

〈第2部:コンサート〉は広い会場になりますので、引き続き予約を受け付けております。

前売り:横浜みなとみらいホールチケットセンター 045-682-2000 minatomirai.pia.jp/

 チケットぴあ t.pia.jp〈Pコード234-670〉

チケット予約こちらのフォームからお申し込みの上、当日、受付窓口でお名前をおっしゃってください。入場代金と引き換えにチケットをお渡しします。

横浜みなとみらい  レセプションルーム〔アクセス〕

横浜みなとみらいホール6階(ホール楽屋口から入り左へ。エレベーターで6階に上がってください。楽屋口はホール入口前左手に一度建物を出て右手にあります)

〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい2丁目3-6

主催:日本ベートーヴェンクライス(BKJ)

協力:横浜みなとみらいホール(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)

後援:日本ホルン協会


この日の午後7時より、横浜みなとみらい 小ホールでナチュラルホルンアンサンブル東京による【第2部:コンサート】が開催されます!

 第2部のコンサートでは、ベートーヴェンと、彼と関わりのある作曲家によるホルンの知られざる名曲を、BKJ例会でおなじみの小倉貴久子さんによる1800年頃製作のブロードウッド製フォルテピアノとのアンサンブルでお届けします。ベートーヴェンの「ホルンソナタ」を始め、ピアノ伴奏版で「2本のホルンと弦楽四重奏のための六重奏曲」を披露。また、有能なふたりの弟子、リースの「ホルンソナタ」、チェルニーの「アンダンテとポラッカ」を演奏します。ライヒャの名作「ホルン三重奏曲」がナチュラルホルンの演奏で聴けるのも大変楽しみです。

第2部の詳細はこちらをクリック!


ベートーヴェンとホルン

 ホルンが「移調楽器」と言われる所以は、ホルンがほかの楽器と合奏を行うようになった、バロック・古典派の時代に遡ります。当時のホルンの長さは一様ではなく、さまざまな長さの楽器がありました。3m半ぐらいの長さの管がF調で、それより長いとEs調、D調と低くなっていき、短いとG調、B調と音が高くなっていきます。

 19世紀前半のベートーヴェンやメンデルスゾーンの時代までのホルンは、無弁の今日ナチュラルホルンと呼ばれているただ管を巻いただけの楽器が使われていました。自然倍音を奏で、ベルの中の右手を操作して、全音階を、高音部では半音階を奏でることができたホルンは、古典派〜ロマン派時代には管弦楽に欠かせない楽器として、その時代を象徴する楽器として大活躍しました。

 ただ、オープンで出せる音は長調の主和音が主で、例えば「シ」の音は塞がなければ出ません。しかしそのストップされた金属音は主音を導く緊張した性格を孕みます。導音「シ」で緊張した音が主音「ド」でオープンになり解決する、という和声のもつ性格が奇しくも表現されるのです。

 ナチュラルホルンは、主和音は開放、転調してゆくと緊張感が高まるという和声の法則に合致する、音楽に即した楽器ということができます。

 しかし、この無弁のホルンの特性を理解し作品に生かすことは、作曲家にとって容易なことではありません。主和音は奏でても、転調する副主題部や、遠隔調まで旅をして緊張感の高まる展開部でホルンの使用を諦めてしまうモーツァルトの管弦楽作品の例に見るようなホルン使いが一般的だった中で、遠隔調でも積極的にホルンを活躍させる作曲家が現れました。

 ートーヴェンはホルンの特性を深く理解し、ストップ音を積極的に活用し、不協和音に音質的な厳しさを与え、ドラマティックに作品を展開する時に効果的にホルンを活用しました。

 また、ナチュラルホルンでは、一般的に最も長い5m超えのB basso管(長い変ロ管)と、最も短い2m半ほどのB alto(短い変ロ管)では、奏でられる響きがまるで違う楽器と感じられるほど異なります。

 ベートーヴェンは、鋭く明るいA管、明るく穏やかなF管、森の響きをもつ柔らかくも力強さを兼ね備えるEs管といったような、各管の音響特性を理解していました。

 Es管が40cmほど短くなりF管になると、森から田園に出てくるような音響の変化がもたらされること。7番のリズムの立った歯切れの良さを出すためには短い管(3m弱のA管)を使うべき、という感覚をベートーヴェンは身体で理解していました。5m弱のC basso管は確かに鈍重なくぐもった音色をもっていますが、速い息を吹き込めば咆哮するような壮絶なパワーが生まれます。交響曲第5番の終楽章でベートーヴェンが選択した調(ハ長調)です。

 他の楽器でも例えばホルンと同じように調性による音色感に顕著な違いがあった当時のフルートは、♭系がくぐもり、♯系が華やか、という性格をもっていました。

 ベートーヴェンが交響曲の調性を考える時に決め手となったのは、ホルンをはじめ各楽器がどのような響きを醸すか、ということが念頭にあったのです。

 19世紀、ロマン派の時代以降ホルンにバルブがつけられた後も、少なくとも思想的には無弁ホルンの多彩な響きがオーケストラでは想定されていました。バルブがつけられた後にも、右手を並行的に利用して、ストップ音で導音を吹いた、なんていうことは普通に行われていたでしょう。

 ブラームスが、無弁ホルン(Waldhorn)を愛してやまなかったことはよく知られています。彼の時代には、既にどこのオーケストラでもヴァルブ付きホルンが一般的になっていたにもかかわらず、彼の書いた全てのホルンパートは、無弁のホルンが想定されています。

「移調楽器」と言われるホルン。ナチュラルホルンを通すと見えてくるのは、ただ音を何度移調して吹けばよいということではない奥の深い世界。例えばin Esと指示があったら、ただその音が出ればよい、という以上に、「Es管の響きで!」という作曲家の声が聞きとれるようになります。

 ワーグナー、ヴェルディ、ドヴォルジャーク、サン=サーンスも。彼らの調の指定を、文字通り「管の指定」と捉えてみると、今までとは異なった世界が現れてくるはずです。

 なぜワーグナーが細かく読み替えを求めてくるのか。それは、移調先で演奏者が第何音を演奏しているかを指し示してくれる配慮でもあるわけですが、その「管」で演奏してくれという意味が付与されていると考えると、ワーグナーのホルンパートがこれまで以上に色彩感豊かなものに感じられてはこないでしょうか。彼のホルンパートこそ、ナチュラルホルンの感覚で右手を併用して演奏すると、ワーグナーの思い描いていた世界が表現されると確信しています。

 我々のダブルホルンには、幸いなことに12の調全ての「管」が備えられていますから、今日から実践することが可能です。F管で1番指だけを押さえっぱなしにすれば、Es管ナチュラルホルンの完成です!

〈ナチュラルホルンアンサンブル東京〉は、6月13日に、日本ベートーヴェンクライス特別例会で〈ベートーヴェンとホルン〉と題したレクチャー(14時開演)とコンサート(19時開演)を催します。レクチャーでは、ベートーヴェンのあらゆるオーケストラフレーズをメンバー6人で吹きまくります。ストップ音がどのような効果を作品に与えたのか。A管とEs管にどれだけの響きの違いがあったのか。ぜひ〈ベートーヴェンとホルン〉の世界を体感しにいらしてください。詳細はコンサート・ガイドまで。

ナチュラルホルンアンサンブル東京


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