星の冠 〜ロベルト&クララ シューマン〜

フォルテピアノ:小倉貴久子

 

収録曲:

クララ・シューマン:前奏曲とフーガ 変ロ長調 作品16-2

ロベルト・シューマン:クライスレリアーナ 作品16

クララ・シューマン:ロベルト・シューマンの主題による変奏曲 作品20

ロベルト・シューマン:幻想曲 ハ長調 作品17

使用フォルテピアノ:J.B.シュトライヒャー製作(1845年 ウィーン)

録音:2014年11月 さいたま市プラザウエスト さくらホール 発売:2016年1月

解説:田辺秀樹

製造・発売元:コジマ録音

ALM RECORDS ALCD-1153 3,024円(税込価格)

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CD:星の冠 〜ロベルト&クララ シューマン〜

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このディスクは〈レコード芸術〉誌で特選盤、〈朝日新聞〉for your Collectionで特選盤(紙上写真付き)、〈読売新聞〉サウンズBOXの推薦盤、〈音楽現代〉誌で準推薦盤に選ばれました。〈ぶらあぼ〉のPickUp欄で、〈月刊ピアノ〉のRelease情報欄で、そして〈CDジャーナル〉で紹介されました。レコード芸術2021年11月号の特集〈新時代の名曲名盤500〉でR.シューマン「幻想曲ハ長調」が第2位に、「クライスレリアーナ」が第6位に選出されました。

ひそやかに耳傾ける人のために・・・

シューマン夫妻が描いた愛と夢をシューマン時代のフォルテピアノで詩的に ロマンティックに 雄弁に物語る

【特選盤】「クライスレリアーナ」「幻想曲」の二大作が、シュトライヒャー製ピアノの響きを介し、燃えあがるような情熱を露わに。妻クララの曲が優しくそれを受け止める。鍵盤上で重なる二つの愛。(朝日新聞2016年1月14日夕刊 for your Collection 矢澤孝樹氏の評)

 

【推薦盤】小倉貴久子の演奏は19世紀半ばのフォルテピアノが秘めた表現の可能性を、その限界も含めて最大限に示している。聴き慣れた「幻想曲」と「クライスレリアーナ」もすこぶる新鮮。妻クララの作品も強い共感を持って弾かれている。(読売新聞2016年1月21日夕刊サウンズBOX)

 

【推薦】日本の、と言わず国際的な視野で見てもフォルテピアノの代表的名手に挙げられるであろう小倉貴久子が、このたびはシューマンの世界に分け入る。しかも《クライスレリアーナ》《幻想曲》ハ長調と、最も本格的な作品を揃えて。近頃のシュタイアーの先例はあるにせよ、まだまだ未開拓だと考えられるピリオド楽器・奏法によるシューマン。小倉はかねがねショパン、それも《練習曲集》を録音して瞠目させたように、ヴィルトゥオーソの域に達したピアニストであり、技術上の気がかりなどは全くない。しかもここで、CDはロベルトのみかクララ・シューマンまでも包み込み、夫妻へのオマージュとなっている。クララの作品からは、作曲家としての器量の高さを証明する2曲、《前奏曲とフーガ》変ロ長調と《ロベルト・シューマンの主題による変奏曲》が選ばれたのも周到。CDはタイトルを『シュテルンビルト(星の冠)』と言うが、これはシューマンが《幻想曲》の終章に当初与えようと考えた題名。彼が彼女に、また彼女が彼に、胸中で与えたロマンの冠。演奏ぶりは、そうしたシューマン夫妻への思いを根底に、フォルテピアノー使用楽器は1845年ウィーンのJ.B.シュトライヒャーー独自の音調を生かしつつ、絶えずニュアンス豊かに弾き上げたもの。たとえば《幻想曲》第1楽章の展開部、「イン・レゲンデントーン(伝説の音調で)」と記されたあたりも、これこそシューマンの思い描いた音なのだ。聴くべき秀演。(レコード芸術2016年2月号 濱田滋郎氏)

【推薦】フォルテピアノの小倉貴久子が、愛器ヨハン・バブテスト(J.B.)シュトライヒャー(1845年)でロベルト&クララ・シューマンのピアノ曲のアルバムをリリースした。J.B.はナネッテの息子で、両親の没後、楽器製作の事業を引き継いだ。ウィーン式跳ね上げアクション、鉄骨の支えはあるものの、木製の自然な倍音を尊重した楽器の音色は、エラールやプレイエルらフランスの楽器とは違う味わいがある。それは後のベーゼンドルファーなどに通じるウィーンの響きだ。アルバムのタイトル、『シュテルンビルト(星座)』(この盤では『星の冠』)は、いうまでもなく、《幻想曲》終楽章の初期の標題。シューマンが、あるいは夫妻で熱中したバッハや対位法研究の成果ともいえるクララの《前奏曲とフーガ》作品16の2で始まり、夫妻の作品を交互に弾く。田辺秀樹氏が書いておられるように、1曲目は決して堅苦しい理論的な作品ではなく、女性的な柔らかなロマンティシズムが快い佳作・演。《クライスレリアーナ》では小倉は持ち前の名人芸を発揮して情感豊かな演奏を聴かせる。声部の弾き分け、平行弦ゆえのテクスチュアの透明度の高さも特筆される。クララがデュッセルドルフ時代に夫の誕生日に捧げた《シューマンの主題による変奏曲》はほどよいメランコリーと感傷的な気分に始まり、変奏で小倉は内面を深く降りてゆく。《幻想曲》も燃焼度の高い小倉のピアニズムと楽器の響きが溶け合って唯一無二の魅力が生まれている。(レコード芸術2016年2月号 那須田務氏)

[録音評]やや華やぐ音色が印象的。1845年のウィーン製フォルテピアノによりロベルト&クララ・シューマンの曲が集中的に演奏されている。演奏をほどよい距離感で収めていて、残響は豊かだが過度にならない抑制が効いている。軽快な華やかさにフォルテピアノ的な匂いが、フォルテやフォルティッシモのアタックの明快さにはピアノっぽさが出ていて興味をそそる。〈90〜93〉(レコード芸術2016年2月号 神崎一雄氏)

 

【準推薦】シューマン夫妻の作品を、小倉喜久子が作曲者と同時代のフォルテピアノで演奏する。シュトライヒャーが作ったこの楽器は、音域によって異なる音色を持つ。それが作品に仕組まれた「おしゃべり」の様子を克明に描き出していて興味深い。とりわけコントラバスのピチケートを思わせる低音の響きが、ロベルト特有の「翳り」をうまくすくい取っていく。音色の変化や音量の対比が、緊張と弛緩の行き来に結びつけられているので、ロマン派特有の「怪しげな」ハーモニーの運びも、しっかりと「居心地悪く」聴き手の耳元に届く。それでこそシューマンの音楽だ。作品の芯に迫る小倉の手練が心地よい。ロマン派のピリオド演奏、次の一手に期待。(音楽現代2016年3月号 澤谷夏樹氏)

 

ピアノの前身にあたるフォルテピアノの魅力を伝えつづける小倉。本作ではシューマン夫妻の作品を交互に並べ、演奏には当時の楽器を使用した。それにより浮かび上がる、モダンピアノとは異なる作品の表情に驚きの連続。とくに音の混ざり具合が独特で、その響きとバランスを精密にコントロールする小倉の感覚が冴えわたる、聞き応え満点の1枚(月刊ピアノ2016年2月号 北山奏子氏)

 

多様な時代の楽器を弾き分けてきた小倉は、どんな楽器を目の前にしても「自分の声」にしてしまう。本作ではシューマン夫妻がピアノ曲を書いた時代である1845年製のシュトライヒャーを使用。親密に響き合うかのような夫妻の作品を交互に並べることで、時代の空気感も立ち上がってくるようだ。(CDジャーナル2016年3月号 堀江昭朗氏)

 

Interview 小倉貴久子 フォルテピアノが映し出すシューマン夫妻の内面

 チェンバロやフォルテピアノなど、作曲家が生きていた「時代楽器」でバッハやモーツァルトの作品が演奏されるようになって久しい。だが19世紀ロマン派のレパートリーについては、世界的に見てもまだ始まったばかり。小倉貴久子はシューマン夫妻の作品を当時のフォルテピアノでいち早く収録し、アルバム『星の冠〜ロベルト&クララ シューマン』をリリースした。使用したのは、夫妻が親しんでいたウィーン式アクションによるJ.B.シュトライヒャーの楽器、小倉自身が所蔵する1845年製のフォルテピアノだ。

「楽器と作品とは密接に関係しています。当時の楽器で弾いたとたん、作曲家が楽譜に書いた記号の本当の意味が、いきいきと伝わってくるのです。ドイツ語の子音のようにはっきりと発音し、平行に張られた弦が多声部をすっきりと響かせるーそんなJ.B.シュトライヒャーのピアノでシューマン夫妻の作品を録音したいと思いました。10年ほど前に入手した楽器ですが、数年前にこのピアノに合う弦を見つけ、張り替えをし、馴染んできたところです」

 アルバムはクララとロベルトの作品が交互に並ぶ。「クララの『前奏曲とフーガ』は、夫妻が仲睦まじく研究していたバッハの影響を受けた作品です。形式こそバロックですが、アイディアは完全にロマンティックです。『クライスレリアーナ』は文学青年だったロベルトが、愛するクララ一人のために、音楽でしか表せない思いを込めた作品。フォルテピアノならではの親密な響きでこの曲を聴いていただきたいです。続くクララの『ロベルト・シューマンの主題による変奏曲』は、最後に2人で過ごしたロベルトの誕生日に贈られた作品です。その数カ月後に、ロベルトはライン川に投身自殺をはかります。すでに精神を病んでいたロベルトと自分の未来を予感し、クララは愛する夫の名を世に残そうと、この曲を書いたのかもしれません。私が学生時代から人生の節目に弾いてきた作品です。いつかCDにしたいと願ってきました。クララの『変奏曲』の最後は、第3楽章との共通点を感じます。もともとこの楽章に付けられていたロベルトの言葉『Sternbild 星の冠』を、このアルバムタイトルにしました」

 前作のモーツァルト作品集『輪舞』に続き、小倉が「作曲家のプライベートに立ち入るかのような親密さ」をコンセプトにしたというアルバムだ。大切な人を想いながらゆっくりと耳を傾けたい。(ぶらあぼ2016年2月号 PickUp 取材・文:飯田有抄氏)

 

そしてロマン派の音楽へ

 多種多様なフォルテピアノと時代の演奏習慣に通じ、日本のフォルテピアノ界の牽引者の一人である小倉貴久子が2016年にリリースしたアルバム。本作の到来は、ロマン派以降の鍵盤音楽のHIPがいよいよ充実していくことを感じさせた。小倉が所有する1845年製J.B.シュトライヒャーのオリジナル楽器によって収録。平行弦での《クライスレリアーナ》は、よりすっきりとした印象をもたらし、親密さや温かさ、若々しさなども伝わる。(レコード芸術2022年6月号 特集音盤プレイリスト15 No.9〈銘器続々!フォルテピアノ録音〉飯田有紗氏)