小倉貴久子 活動の記録

1999年

○2月24日 紀尾井ホール

オーケストラ・シンポシオン 諸岡範澄(指揮) 日本モーツァルト協会例会

モーツァルト:クラヴィーア協奏曲 第19番 ヘ長調

 

☆1999年4月21日 三鷹市芸術文化センター

荒井英治、小倉貴久子デュオコンサート ~ベートーヴェンと仲間達~

 前半のプログラムはJ.B.シュトライヒャーを用い、フンメルとリースのヴァイオリンソナタを演奏し、後半はA.ヴァルターでベートーヴェンのヴァイオリンソナタ作品23と作品24を演奏しました。 フンメルはベートーヴェンのライバル的関係、F.リースはベートーヴェンの弟子で後年ロンドンから師匠を励ましました。荒井英治さんと興奮の一夜となりました。

J.N.フンメル:ヴァイオリンソナタ ニ長調 作品50、F.リース:ヴァイオリンソナタ 嬰ハ短調 作品71

L.v.ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ イ短調 作品23、ヴァイオリンソナタ ヘ長調 作品24「春」

 

音楽の友1999年6月号 コンサート・レヴュー

荒井英治、小倉貴久子(ヴァイオリン&フォルテピアノ)

 東フィルのコンサートマスター、荒井英治と、ブルージュでの優勝歴をもち「音楽の玉手箱」などでオリジナル楽器の演奏会を精力的に行う小倉貴久子が、ベートーヴェンを軸に、同時代のフンメルと弟子のリースをカップリングしたすぐれたプログラミング。フンメルの方は、野にあったベートーヴェンとは対照的にサラブレット的な存在であり、モーツァルトやハイドンの作風を色濃く残しているのに対して、弟子リースは、尊敬する師の激情性が色濃く投影されていた。フンメルのヴァイオリン・ソナタOp.50、リースのソナタOp.71、そしてベートーヴェンのソナタOp.23「春」を一夜に聴くと、当時の歴史的時間がつらなって聞こえてくる。弦をはじくフォルテピアノの金色の響きと荒井のソフトで繊細なヴァイオリンが柔らかに重なるフンメル作品は、この作曲家が当時ウィーンの人気作曲家だったことを改めて認識させる好演。アンコールには珍しいベートーヴェンの「モーツァルトの『フィガロの結婚』より『伯爵様が踊るなら』の主題による12の変奏曲」(4月21日三鷹市芸術文化センター)  (小倉多美子氏)

☆5月18日 近江楽堂(東京オペラシティ内)

近江楽堂バロックシリーズ ~バッハの息子達の果たした偉業~

カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ:識者と愛好家のためのロンド、ヨハン・クリスティアン・バッハ:ソナタ ハ短調 他

 

○5月29日 アクトシティ浜松 中ホール

ピアノとその仲間たちの世界大会浜松’99 ~クリストフォリピアノコンサート~

ジュスティーニ:ソナタ、バッハ:「音楽の捧げもの」より

 

☆11月12日 東京文化会館 小ホール

小倉貴久子ピアノリサイタル ~ショパンのルーツとオリジナリティー~

フンメル 気まぐれな美女、ショパン:ピアノソナタ ロ短調 他

 

マンスリーみつびし 1999年12月号

私的オススメ・メディア 黒澤明が脚本を書いた遺作「雨あがる」の完成を喜び、ピアニスト小倉貴久子の新鮮で明るい演奏に注目。永井荷風の名随筆「日和下駄」に散歩の王道を見る。

(関連記事だけを抜粋させていただいております)

世界のクロサワが遺した脚本を見事に映画化

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ピアノ奏者、小倉貴久子が初のCDをリリース

 ホロヴィッツを神格化するのもいい。グレン・グールドをあがめたたえるのもいい。

 しかし私は、現代に生きている日本人のピアニストやチェンバロ奏者を応援したい。青柳いずみこ、熊本マリ、曽根麻矢子、そしてもうひとり注目しているのが小倉貴久子。

 この人の古楽器演奏をはじめて聴いたのは96年4月、お茶の水カザルスホールで。前年、ブルージュ国際古楽コンクールのフォルテピアノ部門で、第1位となった、そのいわば凱旋公演だった。そこで彼女は、私の大好きなハイドンのピアノ協奏曲を弾いた。当時、世をあげてモーツァルトばやりのなか「ハイドンを忘れてもらっては困る」と考えていた人間には、いかにもハイドンにふさわしい、明るく楽しい演奏だった。

 以来、小倉貴久子の「追っかけ」状態。フォルテピアノという古楽器の柔らかい音に魅了されている。

 小倉貴久子は東京芸術大学のピアノ科卒。在学中に第3回モーツァルト音楽コンクールで第1位を受賞。そのあとアムステルダム音楽院に留学し、古楽器を学んだという。

 その彼女がはじめてファン待望のCDを発表した。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「テンペスト」若き日の楽聖のソナタを、実に若々しくのびやかに弾いている。深刻なベートーヴェンではない。まるでハイドンのように明るく清朗。

 CDの発売を記念して12月には東京・六本木のオリベホールでリサイタルもあるから楽しみ。

東京の街をすみずみまで歩いた永井荷風

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(文・川本三郎氏)

 

☆11月19日 オリベホール

小倉貴久子フォルテピアノリサイタル THE TEMPEST

ベートーヴェン:7つのバガテル、クラヴィーアソナタ「月光」、「テンペスト」他

 

讀賣新聞 1999年12月16日(木) 夕刊 クラシックNOW

「プレリュード」 作品が最も生きる楽器で ピアニスト 小倉貴久子

 現代のピアノの前身に当たる古楽器「フォルテピアノ」の演奏では、日本の若手で屈指の存在。十月にベートーヴェン中期のピアノソナタ三曲を収めた初のCD(セシル)を出した。

 「有名な『テンペスト』のソナタを今のピアノで弾くと、時に音量が出過ぎて、ラフマニノフの曲みたいになってしまう。曲の強弱の幅が広いフォルテピアノなら、軽やかな音色で細かい表情まで出せるんです」

 東京芸大を経てオランダ留学中にフォルテピアノと出合い、九五年の「ブルージュ国際古楽コンクール」で優勝。その後も、活躍を続ける三十一歳。楽器に対する考え方は柔軟で、時には現代のピアノも弾く。

 「私は作品の性格に忠実でありたいだけで、曲が最も生きる楽器を選びたいのです」。当面の目標は「ベートーヴェンやモーツァルトの面白さを追求すること」と、意気込んでいる。