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小倉貴久子 おぐらきくこ

 

 岩手県一関に生まれる。ピアニストへの夢は幼少時からのもので、度重なる引っ越しの中でも挫けることはなかった。

 都立芸術高校を経て、東京芸術大学器楽科に入学。中山靖子、田村宏、平井丈二郎の各氏にピアノを師事する。在学中、「第3回日本モーツァルト音楽コンクール」ピアノ部門で第1位を受賞。芸大定期演奏会ではストラヴィンスキーのピアノ協奏曲を演奏する。卒業後、同大学大学院に進む。さらに大学院在学中にオランダ・アムステルダム音楽院に留学し、ヴィレム・ブロンズ氏にピアノを師事。

 オランダではアムステルダム音楽院定期演奏会のソリストとして迎えられたり、アムステルダムコンセルトヘボウ小ホールのランチコンサートに出演するなど、オランダ各地でリサイタルを行う。留学中、古楽演奏に興味をもち、チェンバロをA.アウッテンボッシュ氏に師事するほか、独学でフォルテピアノ演奏の研究を始め、また、バロックダンスのレッスンに通うなど古典演奏の造詣を深める。93年、オランダ国家演奏家資格と特別栄誉賞"Cum Laude"を得て音楽院を首席卒業。

同年、古楽器を扱うコンクールで最も歴史のある〈ブルージュ国際古楽コンクール〉アンサンブル部門で第1位を受賞(トリオ・ファン・ベートーヴェン クラリネット/坂本 徹、チェロ/諸岡範澄)。オランダから帰国後、東京芸術大学大学院を修了。95年には〈ブルージュ国際古楽コンクール〉フォルテピアノ部門で9年ぶり史上3人目の第1位と併せて聴衆賞を受賞し話題を呼んだ。

 96年4月にカザルスホールで行われた受賞記念コンサートでは、ハイドンとモーツァルトのピアノ協奏曲をオーケストラ・シンポシオン/坂本徹指揮と共演し各紙で絶賛される。その後はテーマを定めた定期的なリサイタルと、自ら主催する室内楽シリーズ《音楽の玉手箱》を催すほか、『モーツァルトの生きた時代』『ベートーヴェンをめぐる女性たち』などのお話付きのコンサートシリーズでも好評を博した。オーケストラ・シンポシオンなどとベートーヴェンやグリーグ、モーツァルトの協奏曲を共演している。また各ホール主催演奏会や音楽祭への出演も数多い。

 2000年5月には、イタリアで開催された"Europiano Congress 2000"ではクリストフォリを使用したリサイタルを催す。韓国でもコリアン・チェンバー・オーケストラ等と度々共演している。

 セシルレコードからベートーヴェンの作品31でCDデビュー。ALM Recordsからはメンデルスゾーン、コジェルフ、ソナチネ・アルバム、モーツァルト、シューマンなどのアルバムをリリース。また浜松市楽器博物館所蔵の様々なフォルテピアノを用いて、コレクションシリーズとして数多くのCDを発表。それら多くのCDが、レコード芸術、朝日新聞、読売新聞などの誌上で特選盤として紹介されている。2011年7月発売の『イギリス・ソナタ~ブロードウッド・ピアノ新世紀の響き』は「レコード芸術」誌の特選盤とならび、文化庁芸術祭において〈大賞〉を受賞し話題を呼んだ。

 2000年12月号から2年間にわたり雑誌『カンパネラ』に「ピアニストから見たベートーヴェンの素顔」を連載執筆。2003年と2004年に『ムジカノーヴァ』(音楽之友社刊)の「解説付楽譜」のコーナーを担当した。CD付き書籍『ピアノの歴史』(河出書房新社)の著者としても知られ、音楽雑誌にフォルテピアノについてや作曲家について、演奏法についてなどさまざまな記事を寄稿している。2004年度より東京芸術大学古楽科にてフォルテピアノの非常勤講師を勤めている。第86〜88回日本音楽コンクールピアノ部門審査員。NHK『カルチャーラジオ 芸術の魅力~モーツァルトが出会った音楽家たち』の講師を務めるなど古典派の魅力をお話と演奏で伝道。シリーズコンサート「小倉貴久子の《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》」を40回開催し2019年12月に完結させる。

2020年11月からはシリーズコンサート、小倉貴久子《フォルテピアノの世界》を始動。現在第12回までを終え、好評展開中。

第30回(2017年度)ミュージック・ペンクラブ音楽賞 クラシック部門【独奏・独唱部門賞】、第48回(2018年)ENEOS音楽賞洋楽部門奨励賞受賞。令和3年度《下總皖一音楽賞・音楽文化発信部門》受賞。

東京藝術大学講師を19年間務める。東京音楽大学講師。

Walter / Streicher / Pleyel / Sauter / Cembalo / Clavichord